top of page

研究概要

遺伝変異を利用した分子レベルの生物学的仕組みの解明と生産現場への応用

(1)GAシグナルを標的とした分子農学の展開

植物ホルモンであるジベレリン(GA)は、植物の草丈、開花促進、葯の形態形成など多くの生理作用が知られています。GAを植物がどのように認識し、これらの生理作用を引き起こすのかを理解することは、大変興味深いと同時に応用的にも重要です。私たちは、イネ突然変異体を用いてこれらGAに関する生合成や信号伝達経路の研究を行ってきました。その中で、私たちは世界に先駆けてGA受容体遺伝子を単離し、受容体タンパク質に対するX線結晶構造解析を行うことにより、GA受容体の詳細な構造を明らかにすることが出来ました。不思議なことに、GA受容体は脂肪を加水分解するリパーゼ酵素と大変よく似た構造をしていました。そして、酵素の基質結合部位に相当するところ(結合ポケット)でGAと結合することがわかりました。また、結合ポケットを形成するそれぞれのアミノ酸が、GAの構造のどこと相互作用するのかも分かりました。このことは、GA受容体の結合ポケットにGAと競合して結合するアンタゴニスト化合物や、構造は違うけれどもGAと同じような働きをするアゴニスト化合物を予測できるようになったことを意味します。今後はこのような知見に基づいて、GA受容体を標的とした分子農学の展開を目指した研究も進めていく予定です。

研究概要: リスト
gid1%E3%81%AE%E3%82%B3%E3%83%92%E3%82%9A

GA4を結合したGID1

研究概要: 研究

(2)花器官におけるジベレリンの役割

花粉の発達段階において、葯の最内層にあるタペータムという組織が崩壊し、花粉に必要な栄養を葯室内に放出していることが知られています。これまでに、このタペータム組織の細胞死にジベレリンが重要な役割を果たしていることを見出しました。さらに、花粉内でのジベレリンの働きについても、現在研究を進めています。

研究概要: リスト

(3)タンパク質の構造情報を利用した分子育種と新規植調剤の創製

植調剤(植物成長調整剤)とは、成長や発育をコントロールして品質の向上や収量を上げるためなどに用いる薬剤で、農業的に広く利用されています。その多くは植物ホルモンやその誘導体ですが、私たちは植物ホルモンの一つであるジベレリンの生合成酵素や代謝酵素をターゲットとして、これら酵素と植調剤との複合体の構造解析を行うことにより、より効率的な新規植調剤の創製を試みています。

研究概要: リスト
bottom of page